パックラフトでソロの四万十川

+キックボードで、源流から河口まで辿った2023年秋の記録。

標茶では、個人的には旅館泊がおすすめ

f:id:dumkm:20190131153131j:plain

[2018年10月17日]

 13:00 - 標茶町

電車(というか単車両のディーゼル車)は相変わらずえっちらおっちら、のんびり速度で進行します。さすがに網走から釧路方面に向かうこの時間帯、お客はまばらで、なにがしかの工夫をして平日休みをとったファミリーさんとか、リタイアして気ままなお年寄りとか、そういう皆様ばっかりのご様子。ちょうど私の席の近くが、その幼稚園にも満たないくらいのお子様を連れた親子3人のご家族のようなのですが、大人には楽しいローカル線の旅も、お子様にのっては退屈なだけ。たまに外の景色に興味を持ったりして驚いて笑って質問して、あとはだいたいイタズラして怒られてばかり。

 わたしも、もし家族で来ていたら間違いなくこういう目にあっていたと思うのですが、家を離れて早3日目、改めて第三者目線で、かつ浮世離れした気分でこういった家族連れを考察しますと、なんというかつくづく騒がしくて手間がかかって大変なのですが、でも喜怒哀楽の感情がしょっちゅう発生するな、ということです。こちらは単独旅行なので一人で笑ってたり泣いてたりしたら単なる怪しい人なのですが、そうでなくとも大人になるとなににつけても感情の起伏が減ります。

 それに加え、子供はいちいち目に入るものが初めてなので、大人はそれを説明してやらなければなりません。つまり大人にとっては知っていることであっても、無知の子供の目線で、「初めて見たらどんな気分なんだろう」と再度レビューする必要に迫られます。いわば人生リプレイです。

 普段の子守の多忙な生活に追われてばかりだとそんなことを考える余裕もありませんでしたが、こうして精神手余裕があるときに改めて考えると、案外それも楽しめるものなのかもしれない、と思いました。あ、ちなみにわたくし、こども嫌いなのでその後帰宅したら速攻でそんな達観した考えは吹っ飛んでしまいましたが。

 そうこう考えているうちに、やたらと駅間の長い区間もようやく終わり、標茶駅に到着です。まだ時間は1時前だったので、今晩の宿にチェックインもできません。とりあえず、明日の出発地点の偵察を兼ねて、標茶緑地公園に向かいました。駅からまっすぐ伸びる道を500mちょっと、迷いようもありません。

 なるほど、よくある河川敷に広がる芝生やアスファルトで整備された公園なのですが、特に建造物や林などもなく、1つか2つくらい、仮設と見間違うくらいのトイレがあるだけです。カヌー旅の皆様の多くは、ここで幕営するらしいですが、正直街のど真ん中であまり快適なようには見えません。まあ、はなから幕営を放棄して旅館を予約してしまったオレ勝利、といったところでしょうか。

 とりあえず暇の極致なので、そういえばと濡れていたテント、パックラフトなどを干します。ちょうど小学生の下校時間で、やもするとルンペンさんの店開きのようにも見えるので警察に通報されてしまうのではないかとひやひやしましたが、考えてみればここいらへんの小学生は私のようなカヌー旅の人間に慣れているようで、まるで興味も示さないようでした。

 気温が低くスカっと晴れてやや風があり、あらゆるものがものすごく速攻で乾きます。1時間もしないうちにすべてパリパリになりました。ようやく100円エコバックではなく、もとのホグロフスのバッグにパックラフトまでしまうことができ、宿に向かいました。ちょうど3時ころ。

f:id:dumkm:20190131153201j:plain

 こんな時期に一人で宿泊、ということで少し宿の人にも頭上に「?」マークが点灯していましたが、カヌー旅と聞いてハハァと納得されてました。やはり本来のシーズンの時期にはカヌー旅の人も多いようです。ただ、この旅館自体は、どなたかも書かれてましたが本来地元のみなさんの宴会用が主で、帰るのが面倒な人用に旅館も併設、という感じのようです。まず、部屋割りが、ファミリー用が1部屋のほかはすべて六畳一間の独身用ばかり。

f:id:dumkm:20190131153303j:plain
 
 独房...?
 
 でもこの辺の旅館にしては比較的新しくて中もきれいです。そして何より大切なことに、モバイルバッテリーやらスマホやら、あらゆるものが充電し放題(あたりまえですが)。各種バックアップがあるとはいえ、やはりスマホに頼る旅行をしてるので、電池が満ちると心も満ち足ります。

 で、ひといきついて、とりあえず時間もまだ早いので、噂の近所の黒い湯のお風呂に出発。と、その前に、駅の隣にできたオープンしたばかりのコインランドリーに。どうにも3日目で、衣類が臭かったんですよね。洗濯から乾燥まで40分程度で終わってしまう最新式のやつで、非常に助かります。ここに仕掛けてから、いよいよ温泉に突入。

f:id:dumkm:20190131153335j:plain
 なるほど、加熱しているとはいえ、真っ黒の独特な泉質です。都内とか千葉のほうにもこういうのあったと思いますが、それにしても濃厚。これはここの旅館が満室だったこともうなづけます。でもまあ、外来入浴でも十分な気もしました。

f:id:dumkm:20190131153534j:plain

 その後、暇つぶしを兼ねて周囲を散策。よくよく考えてみると、明日の宿泊地、塘路には一切の売店がないようなので、ここが明日朝から明後日の昼までの食糧調達の最終ポイントです。きっちり食糧計画をたてて買うものを考えなければいけないのですが、一方で明日夜が北海道最後の夜になるので、少しはうまいものも食べたいものです。ということで、コンビニやらスーパーやら見て回りましたが、唯一あった地元のスーパーみたいなところは、いわゆるおじーちゃんとおばーちゃんの2人できりもりするTHE・食料品店、という感じのところで、総菜とか、焼くか煮るかすれば即食べられるようなものは売ってませんでした。やむを得ず、駅前のセブンイレブンを使う方針に。

 ということで、コインランドリーで洗濯ものを回収し、身も心も荷物もさっぱりして宿に戻り、夕飯まで暇つぶしです。狭い和室ですが、これはこれで落ち着くもの。久しぶりに宿に置かれていたマンガなど読みふけってしまいました。印象に残ったのが「家裁の人」。

 

 

 犯罪を犯した人の、その後の社会復帰まで考えて裁判する裁判官の話です。そういわれてみると、この釧路地域は、網走刑務所が近いせいもあるのか、やたらと「社会を明るくする運動」ポスターを見かけました。あなたの知らない世界、2018年秋、でした。

f:id:dumkm:20190131153604j:plain

 ということで、夕飯も堪能。旅館でおひとり様夕飯、ですが、ちゃんと食堂でおひとりさまでも気にならない位置の席を用意してくれました。カレーが出たのはびっくりですが、あとはサーモンの刺身も煮物も美味。翌朝も正しい和食の朝食。これで7000円ちょっとですから、非常にお得です。ひさしぶりの布団は、やはり二晩テント泊をしたあとの40代おっさんにはこの上もなく幸せなものでした。

 ちなみに朝のテレビのローカルニュースでは、原油高に一番の時間を割いていました。あと今朝の標茶がマイナス4度になり、この冬かつ全国で一番の冷え込みとのことでした。いちいち日本の北限を感じさせる内容でございました。