パックラフトでソロの四万十川

+キックボードで、源流から河口まで辿った2023年秋の記録。

やはり出発前からトラップを仕掛けてくる四万十川

 さて、前回の釧路川の時には、出発直前になって中流域がカヌー航行禁止と分かった上、改めて調べてみると釧路川的なシーズンは10月の体育の日あたりで終わるようで、オフシーズン中はキャンプ場もやってなければバスも運休、という、えらい処遇に会いました。それを踏まえて今回は事前の下調べを念入りかつ重点的に行っておこうと決心しておりました。
 
 ところが、今回の四万十川も一筋縄ではいきません。もちろん、通常の川下りの人が辿るルートとしては、スタートポイントの江川崎もゴールポイントの中村も鉄道が通じており何も悩むことはないのですが、問題は源流部。先に紹介したデイリーポータルの方は途中、窪川からなんと贅沢にもタクシーを使って大野見というところまで行き、そこから船戸というところまで路線バスを使った、みたいなことが書かれているのですが、どうにも2023年現在で調べてみても、この路線バスが出てこない。
 
 ふと、通常のルート検索系サイトで調べているから悪いのかと、地域の自治体名と「バス」のキーワードで一般検索してみたところ、当たり。どうもこの間にこの路線バスは利用者低迷のため廃止されてしまったようです。しかし、その代わりに各自治体が独自に「コミュニティバス」というものを運行しだしたようで、なんとかこれが利用できそうな感じです。ただ以下のように 敷居の高さが半端じゃないです。特に運行する曜日が水土の週2回とか、もう「旅行者お断りじゃき」という声が聞こえてくるかのよう。
 
自治体ごとの運営のため、自治体(隣町/村など)をまたぐ路線がない
・利用者が少ないため、バスというかハイエースを使用している
・路線によっては運行する曜日が決まっている
・そもそも住民向けで、旅行者が利用してよいか不明
 
 四万十川よ、おまえも釧路川のように出かける前からトラップをしかけてくるのか。。。

 

 ただ、めげずにいろいろ調べてみると、なんとかなりそうなことがわかってきました。まず、コミュニティバスのみ運行と聞き、なんとか西土佐駅からのルートがないかとそちら方面ばかり模索していたのですが、実はもっと手前の須崎駅から出発して四万十川源流の最寄り集落、船戸を通る民間の路線バスが生き残っていることを発見しました。よく読むとデイリーポータルの人も須崎に宿をとったためこの路線を利用しています。あと、自治体ごとのサイトを個別に見ていて気が付かなかったのですが、よく見ると津野町側と中土佐町側で、運行する路線の曜日や時間を多少そろえている気配があり、乗換とはいえないまでも、町境を多少歩けば乗り継ぎができそうなバス路線が発見されました。しかし地名だけ下桑ヶ市とか上高樋とか言われても、歩いて数分の距離だから乗換できる、なんてわからないですよ普通。グーグルマップと何度も見比べてようやく理解しました。
 
 しかし路線的になんとかなることは分かっても、まだタイムリミットの問題がありました。
 
 今回の旅行は家族会議の交渉に敗北し、前回より1日少ない三泊四日の日程になりました。一方、いつもお世話になっているmy-panorama.comさんのルート的には川下りだけで二泊三日かけており、つまり二日目の遅くとも昼前には川下りのスタート地点についていなければなりません。ここで、いろいろ上記の通り途切れた線と線をつなぎ合わせると、なんとかこれなら行ける「かも」という日程は、源流最寄りの船戸という集落に路線バスで初日午前11時半頃つき、午後2時半前には同じ集落のコミュニティバスのバス停まで戻る、つまり3時間弱で集落から四万十川源流までの往復を達成するのが必要十分条件です。
 
 さてここで問題は、船戸集落から四万十川源流までどのくらいの距離があるか。グーグルマップによると(本当になんでも調べられて便利ですね)、船戸バス停から四万十川源流石碑まで7.3km、標高差504m。つまり、往復約15km。上り500m、下り500m。ちなみにこの写真が、実際現地の出発地点の集落から見上げた源流方向で、不入山というそうです。


 これを3時間、生身の体で。
 うん、無理だ。
 
 ...しかし、キックボードならどうだ?登りはともかく、下り7kmなんてキックボードがあれば一瞬じゃね?いやでも、登りはやっぱりただのジョギングによるヒルクライムでしょ?距離7km、標高差500mなんて、登山だったら、単純比較はできませんが例えば日光白根山の一番初心者向けコース、ロープウエー山頂駅から白根山山頂までが距離片道約7km、標高差約600mでコースタイム約5時間とか言われてます。当然登りのほうが時間かかるわけだから、登りだけで約3時間以上?やっぱり詰み?

 

 以下、瞑想に入ります。

 

 私の愛読書に「シャカリキ!」という、今では古典扱いの自転車というかロードレースのマンガがあるのですが、主人公が自転車で坂を登るのが大好物な人で、猛烈な坂を見上げるたびに「無理なんやろなあ」と言葉とは裏腹にものすごくワクワクドキドキの顔をする、というマゾヒスト(失礼)な性格が人気を呼んでいたようです。
 
 また、以前読んだ記事で、冒険家43歳限界説というのがありました。

何でもやれると勘違いしやすい…「43歳」に多くの冒険家が命を落とすのは偶然ではない それでも私を北極に向かわせた「焦燥感」の正体 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 「四十三歳で多くの冒険家が死亡するのは、たぶん、体力が経験に追いつかなくなることより、むしろのこされた時間が少ないと感じて行動に無理が出るからだ。」
 
 もちろん私は冒険家ではありませんしもうすぐ50歳なのですが、おっさんど真ん中の自分としてはそれでも身につまされる内容があります。なにがつまされるって、せっかくこの記事は「いい年こいたら無理は控えろ」と警告しているにもかかわらず、「そうか、年とるとできないことが増えるのか...。」という逆の方向です。次にサバティカルがとれるのは5年後、今でも厳しいと感じるなら5年後というか今後一生無理、やるなら今か...?という、まさに記事が警告している事故を呼ぶパターンですね。
 
 さらにさらに、前回の旅、釧路川での旅路の瞑想で、一つ個人的に結論を得たものがあります。

 「迷ったら楽しい方!」

 私は2018年にこの境地に達して以降、日々の生活で事あるごとにこれを実践し、ことごとく結果オーライなことばかりでした。ちょっと宗教臭くてナニがアレですが。

 

 以上、瞑想終了。

 
 ということで、結論としては感情が理屈に勝利し、あきらかに無理目な往復15km、標高差500mのヒルクライムダウンヒル、タイムリミット3時間という冒険を自分に課すことになりました。冒険家は命をかけたチャレンジをするわけですが、たぶんというかおそらく田舎の舗装道路の山道を上り下りしたところで、万が一事故は起こしても死ぬことはなさそうです。タイムアウトはありそうですが。
 
 と、決心したのはほぼ出発の半年前。ということで、決心したからには一応精神的な覚悟だけでなく、やれることをやっておこう、と日々の体力作りも始めました。それまでなんとなくなあなあでやったりやらなかったりだったジョギングも、2km程度ですが週に3-4回はやるようにし、7分間ワークアウトというサーキットトレーニングもほぼ毎日やるようにしました。あと、なるべく近隣への移動を、車ではなくキックボードを使うようにしました。脱運動不足おっさんです。
 
 そういわれてみれば、先に紹介したキックボードで旅をされている皆さんはアスリートばかりです。定年男子さんなんかは「ランニングならば夜どおし寝ずに走って(琵琶湖を)一周するといったやり方もアリ」とかちょっとよくわからないこと言われてますし、カリブ海の人なんかに至っては道中意味なく上半身裸になって筋肉マッチョを誇ったりしています。やはりキックボードでヒルクライム往復3時間とかを必達として旅程に組み込むには運動不足一筋なおっさんには無理目なのか。。。?

 などど不安は尽きませんが、あっという間に出発日である10月の平日を迎えます。