パックラフトでソロの四万十川

+キックボードで、源流から河口まで辿った2023年秋の記録。

最初の洗礼は公共交通機関のタイムチャレンジ

[2023年10月18日(月)]

 

1日目の日程:埼玉の自宅 - 四万十川源流 - 天満宮前キャンプ場
 
 月曜日の朝、平日の朝。当然大半のまっとうな社会人の皆様はお勤めのある日ですが、わたくしは優雅に個人旅行へと出発です。しかも三泊四日のソロ旅行。なんて贅沢な響き。
 
 しかし実際はカツカツの日程を組んであるため、当然の始発電車での出発。あたりがまだ真っ暗の中、練習を兼ねていきなり自宅から駅まで、キックボードに荷物を装着して移動開始です。実は出発に至るまで、ほとんど本番環境でのキックボード移動を試せてませんでした。
 
 いえ、やる気はあったんですよ。実際、近くにある彩湖という荒川の水を取り込んだ貯水池のある公園まで行って、本番想定のほぼフル装備でキックボードとパックラフトの移動をテストしようとしたりもしました。ですが、実際に彩湖まで車で乗り付けて、「水位低下のため水面利用禁止」の張り紙。公式ホームページ見ても夏場の渇水の時期とか過去の工事の際の利用禁止は書かれていても、この日程では何も断りがなかったのに。そこですっかり意気消沈し、せめてキックボードの移動くらい練習してくればよかったのに、やる気ゼロになってそのまま帰ってきてしまった次第です。
 
 ということで図らずも出発の日の朝の駅までの移動が、本格的なフル装備キックボード移動のぶっつけ本番になってしまいましたが、乗ってみれば案外ラクチンに駅まで移動できました。心配していた重量物をハンドルの前に取り付けてもそこそこ安定した走行です。5年前もたしか同様に始発で釧路川に向けて出発しましたが、その時は重い荷物を背負って徒歩だったので、駅までついた時点でそれなりに汗をかいていたような記憶があります。いきなりキックボードの効果を実感です。

 駅についたら即パタパタとキックボードをたたんで華麗に(自称)徒歩移動モードに切り替え、電車に乗り込みます。たしかに、パックラフト+キックボード+キャンプの荷物は決してコンパクトではないのですが、網棚にザックとキックボードを両方載せてしまってもあまり気兼ねしなくてすむサイズ感です。このあたり、折りたたみ自転車なんかではありえない気軽さではないでしょうか。
 
 京浜東北線からモノレールに乗り換え、一路羽田へ。東京湾から昇る朝日が美しいです。


 
 前回釧路川遠征の際に初めて体験した自動手荷物預け装置も「ふふん、もう驚かないぜ」と手慣れたふりをして、実際は案の定いろいろ操作が分からず手間取ったりして、なんとか装置に吸い込んでもらいました。実はキックボードの預け方に明確な指針がなく、ひとまずザックカバーで適当に覆っておいて、あとは係りの人に聞こう位に思っていたのですが、早朝のセルフ装置付近はJALの社員さん皆無のため、えいやで適当にすませました。5年前はまだまだ印刷された航空券を持っている人のほうが多数派のように見えましたが、現代では皆さん当然のようにスマホで完結されてますね。時の流れを感じます。

 保安検査通過して、出発便のゲート前まで到着。搭乗予定の飛行機を見て「ちっちゃ!さすが高知!」と思いましたが、ボーイング737-800という180人乗りの飛行機で、国内線では一般的なもののようなので、失礼な思い込みだったようです。

 搭乗し、何歳になっても子供の心を持っているのが自慢なわたくしは窓側席で空港の様子を眺めます。ふと外で手荷物を飛行機の胴体に詰め込んでいる係員の人が「あれ、AKBなんちゃらの人かな」というくらいの別嬪さんなのに気づき、いきなりおじさんの心に早変わりです。しかしAKBなんちゃら風の人であってもヘルメットにつなぎスタイルの立派なプロのかたらしく、すごい勢いでゴルフセットなどの重量物をばしばし詰め込んでました。そうか、搭乗客におじさんが多かったのは、お仕事かと思ったらゴルフ旅行の皆様もいらっしゃるんですね。

 そして飛行機はやたらと長い地上走行を経て、あらよっと離陸。お飲み物サービスでコーヒーもらって、ああ、富士山が綺麗と一服、飲み終わってコップ回収のころにはもう着陸の準備。いまさらですが、国内線は本当に飛んでいる時間が短いです。でもそこは腐ってもJAL。着陸時のポエムが「天候に恵まれております」だの「秋の深まり」だの、現代の日常会話ではまるで聞かなくなった日本語の連発。
 
 そんな旅情に浸る間もなく、私の本当のバトルは、この高知龍馬空港到着の瞬間から始まります。号砲が鳴るといっても過言ではないです。
 
 なにせ、事前の乗換案内で調べたルートでは、飛行機到着から、空港バスまでの接続時間がたったの5分。さらに、高知駅でのバスから特急までの接続時間もたったの10分。先に書いた通り四万十川源流の往復も相当チャレンジングなのですが、このカツカツな乗換も十分チャレンジングです。飛行機が天候や機材整備の関係でちょっと遅れるだけでも破綻する日程ですが、何しろどう調べても初日の周遊をこなすにはこの選択しかありませんでした。
 
 というわけで空港着陸とともに、それとなく早歩きで手荷物受取に向かいます。が、しかし高級な席に座っていたわけでもないので、ターンテーブルで回ってくる荷物が当然優先されて出てくるわけでもありません。むしろ見慣れないキックボードという荷物付きだったので気持ち遅めにでてきました。それを抱え、猛然と建物の外へダッシュ。事前に空港のサイトやグーグルマップでバス停の位置を確認し、移動も脳内でシミュレーションしておきました。空港出口を出てすぐ左にある自動乗車券販売機で券を購入し、それっぽいバスに駆け寄ります。ちょうど私が乗ったタイミングで出発するところでした。ふー、ギリギリセーフ。
 
 しかしバスはバスで、高速区間は法定速度で走ってくれるものの、一般道に降りると気持ち多めに信号につかまります。いや、そこは黄色なんでツッコんでよ。。。などと不謹慎極まりないコメントを思い浮かべつつも、バスはどこにでもある郊外バイパスの景色から、徐々に路面電車などが見える、旅情あふれる地方都市の景色に変わっていきます。
 
 バスのルートとバス停の関係が良く分かっておらず、バスは南側から駅に接近し、ぐるっと迂回して駅の北側にあるバスターミナルに到着するようで、そんなのを待ちきれないわたくしは南口側のバス停で途中下車し、駅までまたダッシュ!しました。ほとんどのお客さんはここでは下りず、終点のバスターミナルまでおとなしく乗っているもののようだと気づいたのは下車したあとでした。


 
 そして、なんとか改札前に10分前に到着することに成功!いやー、これは綱渡りな日程ですよ。道路渋滞とかあったら即破綻していそうです。航空機、バス、電車あたりで多少の接続を意識してあったりするものかと思ったのですが、どうもそうでもないようですね。
 
 ということで、なんとか目的の特急に乗れることは確実になったので、駅に付属のコンビニでおにぎりなどを購入。あと、念のためコンロ用のガス缶も探したのですが、案の定売っていませんでした。
 
 ガス缶は、実は高知の駅前にはコーナンというホームセンターがあり(!)そちらでは売っていることは確実だったのですが、さすがに10分だと駅前とは言え多少距離のあるホームセンターの店内まで行って商品を探して購入して戻ってくるのは難しいです。あきらめてこの先のどこかで購入することにしました。しかし航空機移動とガス缶の問題(手荷物預けも禁止)は毎回悩ましいです。
 
 そうこうしているうちにあっという間に特急も出発。先ほど電車と書いてしまいましたが正確には2両編成の特急”ディーゼル車”です。一応指定席もあるようなのですが、なにせ2両編成なので前の車両の半分くらいだけが指定席になってました。しかもほとんど誰も座ってません。もちろん自由席側も十分空席があります。そして、お客様には白装束に杖のかたが数名。なるほど四国八十八か所巡礼の人ですね。これぞ旅情です。

 ところで、先にも書いた通り、私は今から約30年前、高校生の時にここに二度度来ています。いずれも普通列車だったのですが、少なくともホームは地上で、駅の周りに高層建築はなかったような記憶があります。現在では高架になっており、駅の周辺もホテルなど高層建築ばかりです。わたしの埼玉の実家の最寄り駅などは30年経ってもまったく変化が無いというか、むしろシャッター商店街化がすすんでいるのですが、さすが腐っても高知県の県庁所在地ですね。

 途中、当時いちいち面白がって写真を撮っていた「ごめん」とか「とさくれ」とかの駅名を見逃さないように駅を通過するたびに表札をチェックしていたのですが、改めて調べてみるとこれらは高知駅より東側で遭遇するはずがありませんでした。間抜け。

 

 そうでなくとも、何しろローカル線とは言え特急だけに速度も速く、全然目視確認できません。そうこうしているうちに30分ちょっとで須崎駅に到着。

 
 ここからはいよいよローカル色の強くなる、路線バスの旅となります。
 そうそう、重要なポイントとしては、ここの駅舎に入っている郵便局のATMが、この先の旅程的には最後の現金引き出しポイントになります。誰も参考にしないと思いますが、一応ご参考までに。
 
 20分程度の待ち合わせで、時間きっかりにバスが到着。当然、と言ったら失礼ですが、お客は私だけ。この車両がまたなつかしい。私の地元でかつて走っていたものとまったく同じ仕様です。原始的な運賃箱の回収装置といい、「急停車にご注意」のランプといい、まるでタイムスリップしたかのよう。


 などと興奮しているとメシ食う時間を逃すため、車内で失礼しておにぎりをほおばります。なにせこの先ハードなタイムアタックが待ってますので、シャリバテ(登山中などに栄養不足で体調不良を起こしてしまうこと)などしないようしっかり栄養とっておく必要があります。
 
 ということで、バスの旅約40分で、とうとう源流への最寄りの集落、船戸に到着です。ここからはキックボードによるタイムアタックのセクションです。