パックラフトでソロの四万十川

+キックボードで、源流から河口まで辿った2023年秋の記録。

迷ったら楽しい方!

[2018年10月16日]

16:00 - 摩周大橋

 上陸後、なにはともあれテントに戻って、まずは速攻で昨日と同じくペンションビラオの日帰り温泉へ。和琴半島に泊まれなかったのは残念ですが、雨天の中テントを改めて設置する必要もなく、即風呂へ向かうことができるのは助かります。昨日に引き続き人生の生きる喜びを感じずにはいられない、至極の入浴のひととき。時間はまだ4時前でしたが、貸切かと思いきや結構入れ代わり立ち代わりお客さんが来られます。まあ、たしかにいいお湯ですものね。ただあまり思う存分つかってしまうと、このあとテント泊なわたくし的には湯冷めの恐れがあるので、ほどほどの時間で終了。

 それから、傘をさして道の駅に移動。なにかしらすぐに食べられる野菜や惣菜的なものがないかと物色したのですが、じゃがいも一箱とかジビエバーガーとか、コンシューマーの要望にそぐあわない仕様ばかりなので1分で脱出。諦めて昨日と同じく、スーパーフクハラに向かいました。1日たったところで大して品揃えも変わらず、昨日と代わり映えしないお一人様鍋セットとかを適当に買って幕営場所まで戻ります。

 どうせ通り雨だろうと舐めていたのですが、土壁を過ぎたあたりから降り出した雨は日がすっかり落ちてもしとしとと降り続いています。あいにく持参のテントはソロテントなので前室的な部分も小さく、無理やりフライを広げてみても雨を完全には防げそうにありません。思わず鍋すらやめて、おにぎりとビールでごまかして寝てしまおうかとも思ったのですが、子供に読んでやってる絵本の中に「どんなときでもあきらめないのがスクルージ。」(ディズニーの「なんぱせんはたからぶね」という本だったと思います)というセリフがあったのを思い出し、折れかけた心をなんとか奮い立たせて摩周大橋の下に向かいました。

 そこは、橋の大きさの割には妙に地上と橋との空間が狭く、大人だと立つことすらできない空間だったのですが、まあ雨はしのげます。ということで、そこで雨にむせぶ釧路川を肴にようやく落ち着いて晩酌を実施。ビールを2本くらいあけて気分がよくなった頃には雨もやんで昨日より少し太くなった月が顔を出しました。

 寝る前に、もう一度道の駅に行って足湯で体を温めます。まじコレ最高。ていうか、こんなに捨てるほどお湯があるんだから、普通の湯船をつくってくれよ、俺周りの目なんか気にならないから、と言いたかったのですが、お前ではなく周りが迷惑なんだよという天の声が聞こえてきたのでさっさと諦めてトイレに向かい、歯磨きして就寝準備。帰りがけに、さっきの足湯に地元おねいさんらしき二人が入っていて、なにやら「恋の話、略して恋話ー。」をなさっているようにお見受けしたので、ぜひ当方の40数年の人生経験を参考にしていただきたく、足がまっすぐ足湯に向かったですが、リアルにやると即最寄りの交番にお電話されてしまう恐れがあったのでやめておきました。

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 さて、3日めの朝です。

 冷え込んだ気温に対して川の水温が高いのか、あたり一面川霧に包まれています。でもその向こうには登ってくる朝日と雲の感じから、天気は快方に向かう感じです。この日は前フリで散々言及したとおり、ポーテージといいますか予定なしといいますか、単に標茶駅までの鉄道移動で終了な日です。実は昨日の夜も、酒を飲みながら他の方の行動を調べたりしていたのですが、一番気になっていた摩周湖周遊バスに電話してみたところ、またもや「シーズンオフで運行してません」攻撃。こっちはもう、ここに来るまでの間にジャブとかストレートとかいろいろくらってダウン済ですので、いまさらさらに追加で足蹴りくらったところでもとよりヒットポイントゼロです。

 とはいえ、鉄道も標茶方面は12時と17時の2本しかなく、あの実質無人駅みたいなところで数時間暇を潰すのも悔しい、と、道の駅のトイレで朝の定形業務を行いながらGoogle Mapを眺めていました。すると、ふと標茶町と真逆の方向、網走方面に鉄道で向かうと「川湯温泉」という温泉があることを発見。調べてみるとなんと、硫黄泉の名湯で、公衆浴場もあり、鉄道の時間に合わせた形で駅と温泉街の中心部を結ぶ路線バスもある模様。

 キタコレ!

 しかし問題は時間。今6時過ぎで、実質乗れる鉄道は7時過ぎの一本のみ。幕営場所から駅までは徒歩30分弱。つまりテントやら寝袋やら、もろもろ幕営一式の撤収を30分位内で終わらせなければならない。ふつー、ソロ幕営であってもだらだらやると1時間はかかります。

 諦めるか。

 しかし実は昨日の釧路川源流部の倒木との戦いの中で、密かに瞑想モードでもう一つさとっていたことがありました。

 「迷ったら楽しい方を選べ」

 あの、いつ終わるともわからない「倒木vsパックラフト」の「ホコvsタテ」というより「ホコvs紙」みたいな数時間。数分おきに「さあ選べ!」と、都度、選択が1-2箇所しかない倒木の隙間ルートを選ばされる。間違ったら即穴あき、即旅終了。最初は「うーむ、こっちが安全か」「いや、こっちのほうがその先の枝がああなってるから一番楽か」みたいな観点で選んでいたのですが、そのうち、

「いやいや、俺は川下りを楽しみにきているのに、なぜ楽だとか安全だとか、そういうのを選んでるんだ。ここは、楽しそうなところを第一に選ぶべきだろう!」

 と、ソロ川下りにしてはあるまじき危険な判断を最優先で行う考えに至りました。


 しかしこれが実際、この方針にしてからは倒木討伐が随分苦痛でなくなった、というか楽しくなったのです。まあ多分に結果オーライいいますか、逆にこの考えて倒木にひっかかり沈なんかしてたら、半泣きでそのまま川下り中止して埼玉まで帰ってきてたかもしれませんが、とにかくこれで万事楽しく済みました。ということで、これい以降、少なくとも旅行中の大方針として「迷ったら楽しいほうを」というポリシーを決心した次第です。

 ということで、間に合わない可能性も大ですが、小走りで幕営場所に戻り、超適当に撤収を開始。寝袋もテントもくしゃくしゃに詰め込むだけです。とにかくあらゆるものが昨夜の雨で濡れ濡れでパッキングに難儀しましたが、それでもきっかり30分ですべて撤収終了。あたりはいつの間にか川霧も晴れ、朝日に紅葉が映えるビューティフォーな景色になってますが、それらを楽しむ余裕もなく駅へ向かって出発。

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 本当は小走りくらいしたかったのですが、背中の荷物は重いし、濡れてザックに収まらないパックラフトを片手に持ってるし、相変わらず行き倒れ寸前で警察から追われて逃げているような山下清状態で駅に向かいます。いやー、ところで、例の摩周湖観光をしていた女性のかたは、この辺の移動どうされたんでしょうね。ふつーにファルトをお使いのようだったので、ご夫婦のうちどちらかがファルトを背負って、もう一方が二人分のキャンプ道具一式?いずれにしてもまじリスペクトです。

 などというくだらないことを考えながら、なんとか川湯温泉方面の電車の1分前に駅に到着!こんな肺がやぶけるような運動、10年来したことなかったですが、なんとか「迷ったら楽しい方を」の結果OKな方向にもってこられました。