パックラフトでソロの四万十川

+キックボードで、源流から河口まで辿った2023年秋の記録。

釧路湿原はカヌーからは見えないのだ

[2018年10月18日]

 12:00 - 15:00 茅沼 - 塘路二俣

 ところで、前々から薄々気づいていたことではあるのですが、どうもパックラフトで気ままに下ると、世間の皆様の工程時間より少し長めにかかってしまうようです。本日の工程も、標茶から茅沼くらいまでなら、早い人なら2時間ちょっとで来てしまうようですが、私はほとんどどこにも寄り道しないで、きっかり3時間半くらいかかりました。ほぼ無風でです。もともと漕いだところで大して速度も出ませんが、川の流れに対しても若干いつもスリップしながら下っている感じなので、漕がないと川の流速より遅い模様です。パックラフトでこれから下る方は、所要時間に十分注意したほうがよさそうです。
 ということで、昼飯のおにぎりをさっさと摂取完了して、大して休憩も取らず午後の川下りを再開です。本日は日没までに、塘路のキャンプ場まで到着してテント設営完了までしなければなりません。あと4時間ちょっと。ちと気ぜわしくなりますが、しかしながら本日午後の工程は、メインディッシュ(?)の釧路湿原になるのです。YAMAPの地図でも矢印付きで「ここから釧路湿原」と表示されています。できればそれなりに堪能したいところです。

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 とはいえ、急に一面あたりが開け、見渡す限りの湿原、みたいな景色が広がるわけではありません。最初に旧直線区間を塞いだと思われる、天然風にカモフラージュされた石組みの護岸を通過すると、徐々に林が近くなったり遠くなったりしていきますが、別段木立がなくなってしまうこともありません。地図を眺めると、たしかにこの辺からは釧路湿原地域ということになっているはずなのですが、正直これまでの区間と比べて差は大きくない感じです。後日知ったのですが、これはいわゆる湿原における「ハンノキ林の拡大」という問題で、湿原の保護的にはあまり芳しくないもののようです。

kushiro.env.gr.jp

 ただ、直線化を蛇行に戻した工事区間あたりと比べて、若干鳥の種類は増えてきた気はします。源流部でも見かけたヤマセミさんの先導をまた受けることになりました。あと、このへんでは何度かエゾシカさんにも遭遇します。ただ、他の方が書かれていたようなタンチョウ、キタキツネなどはお目にかかることはできませんでした。

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 そんななかで一度、姿は見えないのですがドスン、ドスンというすごい地響きとともにブフーっ、ブブーっという荒い息が聞こえたことがありました。わざわざ上陸して見ることもしなかったのですが、あれは大きめの牡鹿か、または熊さんだったんですかね??なんにせよ、あまり気安く上陸しないほうが安全のためにもよさそうです。

 とりあえず、動物の姿は少ないですが、天候は相変わらず晴天で、気分良く流れに身を任せます。日差しがある分には十分あたたかいので、役に立たないエセゴア靴下は脱いでしまい、裸足で足を投げ出し日差しで温めます。こちらのほうがはるかにぬくぬく。ただ、午後になると若干雲もでてきて、かつ微風も吹いてくるようになり、日が陰った瞬間にものすごく体感温度が低下することに気づきます。気温自体は低く、日射でなんとかもっている感じですね。

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 そうこうしているうちに、ようやくハンノキ林が途切れる区間もでてきて、なにやら湿原っぽくなってきました。ただし、この区間は特別保護区域で上陸禁止、特に右岸側はダメ、ゼッタイ。とのことなので、探検したい気分をぐっとこらえてそのまま下ります。これはあれですね、皆さん書かれてますが、湿原そのものを楽しむなら、カヌーで下るより、どこか高いところから眺めたほうが広大な景色を満喫できそうですね。なんか行きの電車の中で聞いた会話と真逆のような。とりあえず断続的に、アシの林のような区間もでてきたので、どうやら本格的に釧路湿原に突入したようです。

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 むしろ、湿原どうこうより、この荒涼とした感じがいいですね。あいかわらず空は広いし、人工物はいっさい見えないし、他のお客はゼロ。だいたい、普通の川なら、下流に行けば行くほど都市化が進むのに、この川は標茶から先、またどんどん自然の色が濃くなっていきます。思い返してみれば、今日は出港してからここまで、誰にも会ってません。奥さんにはSMS送ってますが。(おおよそすべての区間DOCOMOの電波とれてました) 午前中は暇だな、とか飽きたな、とかあるまじき感想ばかり感じてましたが、午後になるとどうにも、心がカラッポといいますか、荒涼とした自然に圧倒されてただ沈黙するだけ、という空虚で心地よい時間が流れます。

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 上空にはなにやら大きめの猛禽類が多数旋回してまして、最初は一生懸命写真撮ったりしてたんですが、ある時すごく近くまで来たその姿を目視で確認して「ただのトンビ」ということに気づいて、いたくがっかりしました。それ以降、あまり大きめの鳥には興味を持たなくなっていたんすが、あるところで、大きな立木のてっぺんに、なにやら巨大な塊が載っていることに気づきました。
「ずいぶん不自然な木のコブだな...?いや、コブではない!?でもあんな巨大な塊は...」
と思った瞬間、それはブワっと飛び立ちました。

 でかい!

 直線距離で50mは離れていたと思うのですが、広げた羽の広さが車ほどもあるその何かは、悠然と羽ばたいてどこかへ飛んでいってしまいました。真後ろから飛び去っていく姿しか見えず、お腹あたりが白いように見え、帰ってきてから一生懸命鳥の種類を特定しようとしたのですが、どうも結論的にはオジロワシのようです。お腹が白いように見えたのは、丸くて白い尾羽がお腹のように見えただけのようです。圧倒されていて、写真を取るのをすっかり忘れてました。

 続いて、川岸の倒木のあたりに何か黒いものがチョロチョロしているのを発見。こちらはミンクでした。なんと可愛い姿なのに害獣指定されているそうで、たまに駆除されてしまうという気の毒なやつですね。(写真はなんだか黒い毛玉のようなものだけうつってました)

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 ところで、どうもさっきから気になっていたのですが、右岸は上陸禁止の保護地域のはずなのに、堤防のようなものが見えてます。鉄道のようにも見えるのですが、とにかく明らかに人工物っぽい。...と思ったら、いきなり車が走っていってびっくり。地図をみてみると、なんと普通の公道のようです。この区間、しばらくの間この車道と並走します。...ていうか、上陸禁止の意味は?? この車道は、そのうち橋となってくぐります。14:18頃通過。

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 あと、この道路と並走するあたりから、どうもアシ林の向こうから「コウ、コウ」と鳥の鳴き声が聞こえてきます。同じく地図を眺めると、何か沼的なものがあるらしく、そこにいる水鳥の鳴き声のようです。他の皆様はこのへんでだいたいタンチョウを見られているようなので、ぜひわたくしも拝見したかったのですが、残念ながら遭遇することはありませんでした。

 その代わり、ふと空を見渡すと、なんと白鳥らしき一群の編隊飛行を発見。さっきの鳴き声も、もしかしたらこの方達のものだったのかも。今の季節的に、これからさらに日本の南の方の越冬地へ移動していく最中だったのでしょうか。

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 と、なんだかいろいろな自然に圧倒されているうちに、本日のゴール、塘路湖からの流れ込みの合流地点に到着。14:48頃。見逃しては大変、とスマートウォッチの地図と見比べながら慎重に下ったのですが、特徴的な擁壁があり見逃しようがない地点でした。
 普通のかたは、ここから塘路湖へ漕ぎ登っていくようなのですが、パックラフトなわたくしはその利点を最大に活かして、ここから上陸して徒歩でキャンプ場まで向かおうと思います。

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